Arashiology

大野担の嵐オタクによる嵐論

第六章

Just looking at him makes me cry 翔ちゃん見るだけで泣いちゃう

 

嵐用語の基礎知識。

嵐の年長組である大野智櫻井翔のコンビは、山コンビまたはお山と呼ばれている。

いつ誰が呼び始めたのかは不明だが、「嵐」という漢字を「山」と「風」に分けると、「山」が上に当たることからそう呼び習わされるようになった。応用編として、山コンビの言動にファンが萌え転がることを山に登るとか、登山すると言う。また、この二人らしい信頼感溢れるやり取りに対して、山々しいと形容することもある。

 

どちらかというと思考や行動に共通項が多い大宮コンビに対し、山コンビは真逆である。

早口言葉を噛みまくる大野くんに対して、時事用語でも何でもスマートに使いこなすキャスターの翔くん。個展を開く絵の腕前を持つ大野くんに対して、「櫻井画伯」と揶揄される翔くん。運動神経抜群で高いところも平気な大野くんに対して、高所恐怖症で「VS嵐」では残念なところを見せてくれる翔くん。一週間先の約束をしても当日の気分で断っちゃう大野くんに対して、がっつり予定を立てて分刻みのスケジュールをこなしたい翔くん。海外にウェストポーチひとつで出かける大野くんに対して、荷物がやたら多い翔くん。料理が得意な大野くんに対して、タコの刺身も切れない翔くん。メロ担当の大野くんとラップ担当の翔くん、感覚派の大野くんと理論派の翔くん…。

 

細かいところだと、「宿題くん」で、気になるコンビニの女の子に気持ちを告白するというお題が出されたとき、ちょっと笑えるおちゃめな言葉で女心をつかんでくる大野くんに対して、あれだけ語彙が豊富なのにグダグダになる翔くんとかも印象に残っている。

とにかく二人は行動パターンも得意分野も真逆である。

 

嵐のなかでは付き合いの長い二人で、出会った頃はティーンネイジャーだったため、一歳の年の差や一学年の差は大きかっただろう。当時の翔くんにとって、「大野の後ろで踊りなさい」と指示されるような存在だった大野くん。事務所の先輩とあまり交流がない印象の翔くんだけど、大野くんは東山先輩を始めとして、先輩からいじられたりしてかわいがられている。翔くんをバンビと呼んでかわいがってくれる先輩の(V6)岡田くんのことも、大野くんは岡田と呼び捨てにする。そういうディテールのひとつひとつが、「智ちゃんが一年だけ先輩♪」として翔くんに染みついているように思う。

 

嵐としてデビューして20年、もはや一歳の年の差なんてないも同然の関係だろうし、現にニノや松潤なんてあっという間に敬語を使わなくなり、今では大野くんをいじりまくっている。だが翔くんは、他の誰よりも意識して大野くんを年上として扱っている。それは、大野くんが先輩であるというイメージが彼自身に刷り込まれていることもあるだろうが、それ以上に思い起こされるのが、「リーダー決めじゃんけん」のくだりだ。

 

少年隊の番組で、先輩の提案により、嵐はリーダーをじゃんけんで決めることになったわけだが、その場の雰囲気は、明らかに大野くんをリーダーにする流れだった。何より、先輩たちがそういう意向を持っているのを当時の翔くんは感じただろう。だから彼は、勝っても負けても大野くんをリーダーにさせるつもりだったはずだ。本当は納得していなかったかもしれない。これは当時の翔くんにしかわからない。翔くんのほうが場を上手に仕切ることができ、メンバーを引っ張るタイプだったことは間違いないからだ。だが、翔くんは空気を読んだ。その時、翔くんの役割は決まったのだと思う。大野智をリーダーに「させる」のは自分だ、と。

 

どう見てもリーダーという肩書に腰が引けていた大野智を、リーダーにしていく。そのために翔くんは大野くんを立てた。それはもう、夫である波平をどこまでも立てながら、裏では磯野家の全てを仕切っているフネさんのように。彼らを最初に「山夫婦」と呼んだ人を褒めてあげたい。

 

翔くんが大野くんを年上として、リーダーとして扱えば扱うほど、大野くんは自分のリーダーとしての立場を自覚せざるを得なくなる。結果、リーダーはあだ名みたいなもの、と言いつつも、大野くんは(翔くんがリーダーになった場合とは違う)自分なりのリーダー像を考えることになった。彼がリーダーとして見せられるものをメンバーに背中で見せ続けてきた、その動力のひとつは、翔くんの存在だったような気がしてならない。

 

以前、翔くんが雑誌のインタビューか何かで、「自分がニノと同じように大野さんに強めの態度をとったら、大野さんは拒否反応を示す」という趣旨の発言をしている。これはメンバー個々の関係性があるなかで、大野くんは翔くんにだけは舐められてはいけないのだと、本能的に分かっていたからではないかと思う。だから、おそらく「リーダー」という言葉を巡って、山コンビの間にはお互いに踏み込まない独特の緊張感がある。翔くんが大野くんをリーダーと呼ばないのも、そのあたりが微妙に関係している気がする。

 

その一方で、フラットなメンバー同士としての山コンビは、得手不得手が真逆の相手のことを手放しで賞賛し、「他のメンバーと入れ替われるなら?」という質問にお互いを指名するほど相手をリスペクトしている。また、時には相手を頼り、相手が苦手なことは甘々に許す。

 

大野くんの目には、翔くんはあまりに完璧でまぶしい存在に映っていて、だからこそ翔くんからリーダーとして尊敬される自分でなければならないと思うのだろうし、他のメンバー以上に翔くんを頼りにしているし、翔くんのダメなところを「人間くさくていい」と表現するのだろう。そして、翔くんにとっての大野くんは、「どう考えても自分(翔くん)の頭や身体からは出てこないものを持っている人」で、何を置いても立てて、フォローしなければいけない存在であり、大野くんに頼りにされていることが彼の誇りなのだと思う。これが、大野くんの言う「僕の介護要員」(←大野くんが自分と翔くんの関係を例えた発言)の正体で、そんな健気な翔くんに大野くんは時々ドSな態度をとり、スマートで真面目な彼が動揺する姿を見て楽しんでいる節がある。

 

結論、山コンビには緊張感と尊敬と甘々が混在する。

ちなみに、私はコンビでは山推しである。

2019/3/27