Arashiology

大野担の嵐オタクによる嵐論

第三章

I want to know more about him 彼のことをもっと知りたい

 

「魔王」を見終わって1週間ほどは、ドラマの世界から抜け出せず、ふとした瞬間に成瀬領の11年間に思いを馳せるような日々を送った。公式サイトの視聴者からの書き込みも、最初から最後まで舐めるように読み尽くした。今までそんなに多くのドラマを見て来たわけではないが、ドラマの世界にこんなに心を奪われたことは、後にも先にも「魔王」しかない。これに近い感覚が残ったのは、やはり大野くんの「世界一難しい恋」くらいか。

 

初めて「魔王」を見てから約10年が経ち、セリフを覚えるくらい何度も繰り返し見るうちに、ドラマの都合良すぎる展開や演技の粗削りなところなども目に付くようにはなったが、それでも彼の演技から受ける熱量は今も変わらない。彼が憑依型の役者なのは多くの人が認めるところで、私もそう思っているが、色々なものに追い詰められていた当時の大野くんの精神状態が、成瀬という役に乗っかったからこそ、あそこまで説得力を持つ演技になったのだろうと、当時の状況を知った今なら分かる。そして、ドラマの熱に引きずりこまれ、現実に戻れなくなったのが私だけではないことは、このドラマをきっかけに大野くんに興味を持つ視聴者が続出し、「魔王落ち」という言葉が生まれたことからも明らかである。罪作りなドラマとしか言いようがない。

 

さて、気が済むまで「魔王」をリピートするなかで、私はドラマの劇伴や主題歌がやたらかっこいいことに気付いた。ドラマのクレジットタイトルを見てみたら、「主題歌 嵐 truth」とあるではないか。あのかっこいい曲を歌っていたのは嵐だったのか。さっそくMVを見てみると、ピンクのシャツをお召しになった麗しい成瀬さんが歌い踊っていた。この時点で、私は完全に「落ちて」いたわけだが、落ちたのが成瀬領という役なのか、成瀬領の中の人である大野智なのか、いまいち分からなかった。というのも、私はそれまでジャニーズアイドルに興味を持ったことがなく、クラスメートが好きなアイドルでキャーキャー騒いでいても、一向に共感できないティーンネイジャーだったのだ。大人になってからも、ジャニーズアイドルとは、「おしなべて歌が下手で、踊りながら変な曲をユニゾンで歌う集団」(←ひどい)という認識だった。その私が、ジャニーズのアイドルに落ちるなんてことがあるだろうか。ちょっと意地もあったかもしれない。

 

成瀬領の中の人はどんな人物かと思った私は、当時放送されていた嵐のバラエティ番組を見てみた。まだ昼の30分番組だった「VS嵐」で、今にも噛みそうな怪しげな滑舌でふわふわしゃべる、ツンツン頭のお兄ちゃんが大野智だった。深夜の「宿題くん」で、ぐだぐだのコメントでメンバーを笑わせているのが大野智だった。…私が落ちたのは、やはり成瀬領という架空の人物だったのだと思った。

 

それでも気になって調べ(?)を進めていくと、どうやら大野くんは歌がうまいらしい。さらにダンスもうまいらしい。ファンブログなどを参考にして見た動画は「Song for me」だったが、バラエティとは違う顔でキレのあるダンスを踊る大野智に、確かに成瀬領の片鱗を見た。いったい彼は、何者だ。どっちの顔が、大野智なんだ。何かが引っかかり、答えを探すように動画を片っ端から漁った。

 

嵐のDVDにも恐る恐る手を出し、「AAA 2008 in TKOYO」と「5×10 All the BEST! CLIPS」を見た。思いのほかいい曲が多くて驚いた。見られる動画をあらかた見終えた頃には、完全に「嵐」を好きになっていた。相葉すごろくでストッキング兄弟と化す嵐。紙の船で東京湾を目指す嵐。おバカ実験に興じる嵐。…なんだ、このかわいい男子たちは。

 

こうして地球上にまた一人、嵐オタクが誕生した。

2019/3/15