Arashiology

大野担の嵐オタクによる嵐論

附章一

The world is no longer the same すべてが変わってしまった

 

2019127日、嵐が衝撃的な発表をした日からほぼ一年が過ぎた。

振り返ってみれば、長かった気もするし、あっという間だった気もするが、この一年で嵐の状況も自分の気持ちもずいぶん変化した。20周年イヤーが終わって活動休止までのカウントダウンが始まったこのタイミングで、今の私の気持ちを整理してみようと思う。

 

去年の今頃は、まだ嵐の活動休止を受け止められずに悶々としていた。発表から数か月を費やしてこんな論文もどきを書き上げ、ようやく自分の気持ちに整理が付いた。最後のチャンスかもしれないと覚悟を決めて、片道24時間かけて、「5×20」コンサートにも足を運んだ。

 

秋には唐突にYou Tubeに嵐の公式チャンネルが登場し、何が起こっているのかとファンがざわつくなか、そのYou Tubeライブ配信で革命的な新プロジェクトが次々に発表された。これが113日、嵐20歳の誕生日のことである。ここで怒涛のように明かされた新プロジェクトとは、SNS公式アカウントの開設、嵐既存楽曲のデジタル配信開始、新曲のデジタル配信、「JET STORM」第二弾の実施、「5×20」コンサートオーラスのライブビューイング実施、国立競技場でのコンサート開催、北京でのコンサート開催・・・というもので、あまりの情報量と衝撃度に、ネット界隈は祭り状態に陥った。しかも、その日の夜(日本時間)にはさっそくインスタライブで、嵐メンバーが嵐の誕生日を祝うというオマケ付きだ。

 

数日後の119日、嵐は国民祭典で天皇皇后両陛下に奉祝曲を捧げ、その足でプライベートジェットに乗り込んで、翌10日から「JET STORM」と銘打ったアジア四都市訪問を敢行した。「JET STORM」中は、後に翔くんが「まるでギャルみたいだった」と述懐したとおり、松潤が解禁したばかりのSNSでひっきりなしに写真やメッセージを投稿してくれた。嵐とSNSの組み合わせは非常に新鮮だったので、一日中スマホに貼りついていたというファンも少なくなかっただろう。そして、国民祭典や「JET STORM」の興奮も冷めやらぬ1112日、ニノの結婚発表という特大の爆弾も投下されたのだった。

 

今にして思えば、嵐が満20歳になる113日に照準を合わせて、ずいぶん前から膨大な話し合いと準備が行われてきたのだろう。しかし、たかだか10日間でファンを取り巻く状況は一変し、一年前には想像もつかない世界になってしまった。

 

楽曲のダウンロード&サブスク配信がスタートしたことで、海外組がタイムラグなしに新曲を聞けるようになったのは非常にありがたい。新曲「Turning Up」の後で、「A-RA-SHIReborn」や「Turning UpR3HAB Remix)」を次々にリリースしたこと、また、時代の流れからいっても、デジタル配信のスピード感やそれを告知するSNSは今の嵐に必須だったはずだ。ただ、どうしても一曲一曲が軽くなった感は否めない。「A-RA-SHIReborn」や「Turning UpR3HAB Remix)」は、今までだったらCDのボーナストラックになるような曲だと思うのは私だけだろうか。物理的な手間やコストがかからない分、一曲一曲は安くなり、一瞬で手に入るようにはなったが、ネット通販の争奪戦を勝ち抜いて初回盤の予約を入れ、パソコンやスマホに取り込んで聞きこむCDとは、同じモチベーションで聞くことができないのだ。完全新曲ではなく、既存曲のリプロダクション版だから余計にそう思うのかもしれないが、別にダウンロード(購入)しなくてもいいか、という気になってしまう。

 

SNSに関しては、嵐が公式アカウントを開設したことで、これまでは見る専門だった私もついに重い腰を上げてアカウントを作った。今のところ、嵐関係の情報収集と思考を整理するためのソースとしてしか利用していないけれど、SNSの世界に足を踏み入れるきっかけをくれたことには感謝したい。思えばこの10年、私が何か新しいことに挑戦しようと決心するきっかけは、いつも嵐だった。それだけでも私が嵐を好きになった意味はある。

 

とは言え、嵐のSNSの使い方には物申したい。

SNS解禁当日のインスタライブは、視聴者のリクエストに応えてスクショタイムを作るなど、SNSの可能性を感じさせてくれるものだったが、その後、インスタはもっぱら告知動画やストーリーズをシェアする場として使われている。ストーリーズには、嵐メンバーのタイムリーな「〇〇なう」が写っていることもあれば、そのタイミングにちょうどいい写真がない場合は、過去に撮った面白写真が上がることもある。ファンを楽しませるために写真を選んでくれているのは嬉しいが、本来SNSなんて、「〇〇したよ!」とか「面白いから見て!」「これが好き!」とかいう自己満足のツールなので、もっと気負わずに投稿したらいいと思う。どんなにくだらない内容でも、本人が写っていなくても、それを投稿しているのが嵐であれば、ファンには十分価値があるのだから。

それでも、こまめにストーリーズがポストされるインスタはフォローする意味もあるが、ツイッターに至っては、告知と無難な投稿しか上がってこない。内容もインスタとほぼ同じだ。外国のファンに向けて英語を併記しているのも、リアルタイム感を損なう原因になっている。せっかくメンバーが選んだ写真やコメントなのに、翻訳者の手を経てポストされていると思うとどうにもよそよそしい。

大野くんは雑誌のインタビューか何かで、(自分たちの)インスタのコメントも見ていると言っていたが、何千ものコメントをひとつひとつ見るわけにもいかないだろうし、コメントの内容に反応するような投稿がメンバーから上がることもほぼない。現状、SNSを通じたインタラクティブなコミュニケーションというのはごく限られているのだ。

 

嵐がまだ試行錯誤しているのは分かっているが、正直なところ、五つものSNSアカウントは必要なかったように思う。「嵐をより身近に感じてほしい」と始めたSNSだが、インスタライブなど一部の交流を除き、現状ではどのSNSでも嵐を身近に感じることはできない。デジタル配信の楽曲にしろ、SNSの内容にしろ、21年目の新プロジェクトでは、嵐が世界のファンを意識しているのが感じられる分だけ、嵐が遠くなった気さえする。

2020/1/31